地域みらい留学フェスタ2018

2018年6月24日(日)
東京・TOC五反田メッセ

地域みらい留学フェスタ2018
-全国初開催のイベントに560組1,100名の親子が参加-

「地域みらい留学フェスタ2018」は、全国から生徒を募集する公立高校の合同説明会。大阪(6月23日)、東京(6月24日)名古屋(6月30日)、福岡(7月1日)を合わせると560組1,173人が、高校進学の新しい選択肢に関心をもって参加した。北海道から沖縄まで32校が出展し、307組628人の親子が参加した東京会場の様子をレポートする。(取材・文:江森 真矢子)。

たくさんの学校と出会い、可能性を広げてほしい

 小雨のちらつく東京、五反田。「地域みらい留学フェスタ2018」東京会場では、受付開始前から数組の親子が来場し開場を待った。続々と集まる参加者は資料を受け取って会場へ。開会プログラム開始までの間、会場では地域みらい留学生や送り出した保護者のコメントが映し出されるムービーが流れている。留学生の声に耳を傾けたり、出展校の情報がコンパクトにまとまったブックレットを見たりしながら会話をする親子の様子からはこれからの半日への期待が感じられる。

 フェスタは朝9時にスタート。大会場での開会プログラムでは、まず主催スタッフが地域みらい留学の魅力と価値、このフェスタで何を持ち帰ってもらいたいかを語りかけた。 「今日は全国からたくさんの高校が集まっています。でも、今日の主役は参加しているみなさんです。充実した高校3年間を過ごすために、それぞれの高校の、”ここでしかできない経験”と出会ってほしい」「進路選択の奥義の1つ目は選択肢を広げること、2つ目は複数校見学すること、3つ目は自分で決断することです。今日はまずたくさんの学校の話を聞いて、気になる学校には実際に足を運んでください」。

 このイベントは、魅力的な高校教育をつくろうという意志ある学校と、挑戦する意欲のある親子との出会いの場である。もちろん、参加者皆が地域への留学に強い希望をもって訪れているわけではない。地域の高校で学ぶことに可能性を感じて学校を探しにくる親子もいるが、少しでもわが子の進路に対する意識を広げ、高めたいと子どもを連れてくる保護者もいる。思いもかけない出会いが、人生の転機になるかもしれない。全国で4回にわたり開催した「地域みらい留学フェスタ2018」は、参加者それぞれの進路選択の可能性を広げられるようにデザインされている。

●地域みらい留学フェスタ2018のプログラム(午前の部)
9:00 開会プログラム
・地域みらい留学の価値と、フェスタの活用方法
9:10 各校プレゼンテーション
10:10 ブースセッション1
・各校ブースでの個別説明、相談(以下同)
10:40 ブースセッション2
11:10 ブースセッション3
11:50 終了・アンケート記入

参加校によるプレゼンテーションからスタート

 受付で配布したブックレットでは、1校1ページで写真を多く使って出展校を紹介している。「我が校の魅力」「一推し部活」「授業外学習サポート」「県外生の生活環境」そして「学校データ」と「地域の魅力」。冊子からも各校の特徴は伝わるが、学習環境の中でいちばん大きく、またダイレクトに学校らしさが現れるのは”人”。視野に入れていなかった学校とも出会い、話を聞きに行ってみようと思うきっかけ作りのために用意したのは1校1分のプレゼンテーションタイムだ。

 ムービーを使って学校を取り巻く環境や生徒の様子を伝える学校が多いなか、先生と生徒が一緒に登壇する学校や、協働する役場職員とともに町ぐるみで応援する姿勢を伝える学校も。短時間でいかに魅力を伝えるか、凝縮したプレゼンテーションには各校の個性が表れ、ブックレットにペンを走らせながら訪れるブースを考える親子の姿が見られた。



各校ブースでじっくり語り合う

 開会プログラムの後は、メインコンテンツである各校ブースでの個別説明が始まる。背面のパネルには校名と並び3つのキーワードが掲げられている。「海」「船」「水産物」(島根県立隠岐水産高校)、「自然豊かな宿舎」「個々能力を活かす小規模校」「地域と根ざした教育」(滋賀県立信楽高校)など。

 これに加えてポスターや制服、プロジェクターとスクリーン、中にはVR(仮想現実)で学校やその周辺環境を体験してもらうという学校も。また、在校生や卒業生と直接話ができるようにオンラインで学校とつなぐなど、リアルな学校の姿に触れてもらうために各校が工夫を凝らしていた。

 各ブースではまず全体に向けての説明があり、その後個別の質問や相談をするのが基本スタイル。ただし、どのブースに参加するかを決めかね、会場を歩き回りながら気になるブースに立ち寄るケースも多い。また、会場に設けられた資料コーナーで学校案内を入手し、中を見てから相談に訪れる親子もいた。

 ブースでの相談内容で多いのは、費用のこと、宿舎のこと、入試の内容や難易度に関するもの。親元から離れての学校生活となると生活面での心配は特に大きいようだ。沖縄県立久米島高校は地域留学生の保護者もブースに立ち、親として心配に思っていたことや実際のわが子の成長をどう見ているかを語り、参加した保護者は熱心に聞きいっていた。

参加者が「地域みらい留学フェスタ」に感じた価値は?

 参加者のアンケートを見ると「大変満足」と「満足」を合わせて88%(全会場計)と高い満足度を得ていることがわかる。この理由として自由記述で目立つのは「さまざまなタイプの学校に出会うことができた」「複数の学校の情報を得ることができた」など、多数の高校が出展していたことがひとつ。また、「学校関係者と直接話ができた」「知りたいことを知ることができた」などブースで直接話ができたこと。そして「選択肢や視野が広がった」「自分の住む都道府県以外の学校を知ることができた」「気になる学校がみつかった」など視野や可能性の広がりを挙げる参加者が多い。

 さらに、「調べていなかった高校でも気になるところを見つけられた」「娘が行きたいと思う学校が見つかった」と進学希望先を見つけられた参加者も多くいるようだ。この他には「感動しました。ワクワクした。それをそのまま子供たちに伝えようと思う。どの学校も本当に魅力的」「スタッフの方々の熱心さが伝わってきた」「子どもがたのしく話を聞いていた」「留学を考えている人たちの多さを実感できた」など、会場全体の熱気や高揚感がそのままアンケートのコメントからも伝わってくる。

出展校、高校生にとっても学びの場に

 それでは、出展した高校側はどう手応えを感じているのだろうか。今年度入試から全国生徒募集を始めた岡山県立和気閑谷高校の上野教頭は「まず参加者数の多さに驚きました。もう少し本校のブースに来てくれたらと思うところはありましたが、オープンキャンパス参加の検討をしてくれた親子もおり、次に繋がる場になりました。また、地域みらい留学に関心をもつ中学生や保護者と直接話をして、その関心の内容を知ることができたこと。直接対話ができたことは大きな収穫です」と言う。

 そして、上野教頭だけでなく複数の出展者が、他校の進める教育内容充実の取り組みや、他県での全国生徒募集のあり方を知ったことなど、情報交換やネットワーキングにも価値を感じていると語っていた。

 また、今回、会場で目立ったのが高校生の活躍だ。広島県立大崎海星高校の魅力を伝える活動をしている「みりょくゆうびん局」メンバーが、手作りの郵便ポストを着て会場を歩く姿は、多くの人たちの印象に残っただろう。広島県立加計高校や加計高校芸北分校、広島県立上下高校、群馬県立尾瀬高校の生徒たちも数百人を前にしてのプレゼンテーションを行い、ブースを訪れる親子からの質問に答えた。彼らに共通するのは、いま自分が送っている充実した高校生活を多くの人たちに知ってもらいたいという気持ち。

 一歩踏み出すと、可能性が広がる。中学生、保護者、出展校の先生、高校生、スタッフにとってきっと、そんな希望が生まれた初開催の「地域みらい留学フェスタ2018」だった。

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