History

STORY1
2006年、島根県隠岐諸島・海士町。日本海に浮かぶ人口約2,400人の小さな島から始まりました。
大学休学中にアジア・アフリカの20カ国以上を巡りながらNGOや国際機関で活動した岩本悠(地域・教育魅力化プラットフォーム代表理事)は、「教育を通して持続可能な社会をつくっていきたい」という想いを胸に社会人になりました。
人材開発や教育に関わる仕事をする中で出会ったのが、この小さな島でした。
海士町の人口はかつて約7,000人でしたが、2000年代には約2,400人にまで減少。財政破綻の危機に瀕していました。
また、少子化により、海士町を含む島前地域で唯一の高校である隠岐島前高校の生徒数も89名まで減少し、廃校の危機を迎えていました。
しかし、島の人たちは悲観しているだけではありませんでした。町長以下が自らの給与をカットし、その財源を未来への人づくりや教育投資に充てる決断をしたのです。
身を切る覚悟で未来を変えようとする人たちの本気に心を動かされ、岩本は移住を決意。隠岐島前高校の魅力化プロジェクトが始まりました。
はじめから歓迎されたわけではありませんでした。前例のない取り組みに否定的な声も多く、なかなか協力を得られない日々が続きました。焦る気持ちを抑え、教員や島民の方たちと関係をつくり、話を聞くことから始めました。
少しずつ信頼を積み重ね、やがて同じ目標に向かって走れるようになっていきました。そこから高校の魅力化に取り組みます。
県立高校と地元町村の協働体制の構築、地域を舞台に自分や社会の未来を探究するカリキュラム、公立塾「隠岐國学習センター」の設置。
なかでも目玉は、全国から意志ある高校生を受け入れる「島留学」でした。多彩な刺激と切磋琢磨が生まれ、一人ひとりの個性と力を最大限に伸ばす学びの場として、島の高校は生まれ変わっていきました。
島でプロジェクトを始めて約8年。廃校寸前だった隠岐島前高校は、全国・海外からも志願者が集まる学校へと様変わりしました。

STORY2
「あれは島だからできた」「あの人がいるからできた」—そんな声が聞こえるようになっていました。
しかし岩本は、海士町を「未来の箱庭」だと捉えていました。こうした取り組みを一つの島だけで終わらせず、日本全国の高校と地域の魅力化につなげていくにはどうしたら良いか。各地へ展開するための仕掛けと持続可能な仕組みが必要だと思うに至りました。
2015年、岩本は島根県教育庁の教育魅力化特命官に就任。島根県各地の高校で実践が広がっていくための新たな挑戦を始めました。
島での実践を広域の仕組みに組み込んでいくのは、また別次元の難しさでした。前例がなく、予算も制度もない。そんな中で、志を同じくする高校や自治体、大学、NPO、民間企業—多様なセクターと連携しながら、歯車を合わせていきました。
やがて少しずつ共感と信頼を得ていき、島根県での取組の広がりが見え始めてきました。

STORY3
2016年9月、日本財団ソーシャルイノベーター支援制度において「教育魅力化による地方創生プロジェクト」が応募総数225件の中から最優秀賞を受賞しました。
この受賞をきっかけに、2017年3月、一般財団法人 地域・教育魅力化プラットフォームが誕生しました。
島根県内に留めず、全国・海外へと取組を広げていく、大きな転換点となりました。
「地域×教育の未来を共創するための基盤」をつくるべく、様々な分野で挑戦を重ねてきた多様なメンバーが集まってきました。
その土台を元に全国展開が始まったのが「地域みらい留学」です。
中学生が住んでいる都道府県の枠を越えて、全国の地域の公立高校に進学する、これまでにない仕組みです。
「地域みらい留学」の展開も一筋縄ではいかず、各地域の事情や都道府県の制度の壁も乗り越えながら、一つひとつの地域と向き合い続けました。その積み重ねの中で、「あそこだからできた」から「ここでもできた」、そして「ここだからできた」と当事者が誇れる実践が、各地に生まれていきました。
現在、この取り組みに全国で200校近くの高校と地域が参画し、約5千人の地域みらい留学生を輩出しています。
全国の高校生が自由に地域を”越境”し、五感を使って学べる教育の実現へ。
20年前に一つの小さな島から始まった挑戦が、日本の教育と地域の未来を変える大きなうねりになりはじめています。
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