インタビュー
【地域みらい留学 in 北海道】「めんどくさい」が「やってみよう」に変わった。 十勝の風に吹かれて走る、僕の泥臭くて自由な高校生活
東京の真ん中、目黒区で生まれ育った掛川信重(かけがわ・のぶしげ)さん。渋谷まで2駅という都会の日常から一転、彼が2年前に進学先として選んだのは、北海道にある上士幌高校でした。大の自然好きが高じて飛び込んだ北の大地での生活は、日本で唯一の公立高校の熱気球部での活動や、本格的な自転車で大自然を駆け抜ける日々など、驚きと刺激に満ちています。
説明会で北海道のいろんな高校のブースを回ってみたんです。その中で上士幌高校は2クラスあって、少なすぎず多すぎず、わりと普通の高校らしさもあるというか。本当に1クラスだけで何十人しかいないような学校も結構あったんですけど、その中で上士幌高校の規模感が自分に合っているなと、ちょっと気になって。
最後はフィーリングですね。入学前に一回、実際に上士幌に見学に来たんですけど、そのときに「あ、やっぱりここが良いな」って感じて決めました。

一番大きいのは熱気球部ですね。上士幌高校の熱気球部は、日本で唯一の公立高校の熱気球部なんです。気球の立ち上げを手伝ったり、実際に乗ったり、片付けたり、もろもろ全部やっています。 イベントとかでよくある気球は、紐で繋がれて上下するだけなんですけど、僕たちが部活や競技でやるのは「フリーフライト」といって、紐がない状態で空を飛ぶんです。風の乗る高さによって進む方向が変わるんですけど、上空300メートルとか、高いときはもっと上まで上がります。雲がない状態で空をプカプカと飛ぶのは、本当に最高です。

はい、自転車もすごく好きです。こっちに来るときに「グラベルロード」っていう、ガタガタの道や林道も走れる本格的な自転車を買いました。学校が終わってから、日帰りでサイクリングに行ったりしています。 この間は、ここから然別湖(しかりべつこ)の方まで行って帰ってきたんですけど、そのときは最長で往復120キロくらい走りました。

今は寮に同級生もいなく、後輩も女子だけで別の棟で暮らしているので、実質一人暮らしのような状態です。平日の朝と夜は、町に長く住んでいる調理ボランティアの方が寮に来てご飯を作ってくれます。お昼は学校の給食があるので、週末だけは自分で何とかする自炊生活ですね。 最初は、洗濯物が全然乾かなくて困ったりもしたんですけど(笑)、だんだん慣れてきて、今はもう効率よく「今のうちにボタンを押しておこう」とか考えながら、苦もなくやれています。
そうですね。自分で言うのもなんですけど、もう「町の人全員に僕のことが知られているんじゃないか」っていうくらい、いろんな人と関わりがあります。 地域のおばあちゃんから「これ寮生のみんなで食べさせてあげて」って、手作りのケーキとか、僕らじゃ自分では買えないような差し入れをたくさんいただくこともあります。僕のアルバイト先の方も、「留学生は親がいないから、なかなか遠くに買い物に行けないでしょ」って言って、わざわざ遠くの街まで行ってミスタードーナツを買ってきてくれたりするんです。ある日突然、寮の僕のところにミスドが届いていてびっくりしました(笑)。

一番変わったのは、いろんなことに対して「とりあえずやってみよう」と思う気持ちがすごく強くなったことです。中学の頃の自分は、何かやるにしても「めんどくさいな」っていう気持ちの方が勝っちゃうタイプだったんです。 でも上士幌に来て、2学期頃から急に地域の色んなお誘いやイベントが増えていって。最初はハウスマスター側も「ノブ、これ負担なんじゃないか?」って心配してくれていたみたいなんですけど、僕は全部「やってみます!」って言って参加しました。お祭りのボランティアやゴミ拾い、お神輿を担ぐのにも行きました。
「やってみたら面白いのかな」とか「面白そうだからとりあえずやってみるか」って素直に思えるようになったんです。やってみて、もし仮にしんどかったとしても、それすらも「面白いな」って思えるというか。 周りの大人の人たちからたくさん声をかけてもらって、それを一つひとつ掴んでいくうちに、どんどん自分の世界が広がっていくのが分かったんです。
東京にいた頃より、明らかに喋る大人の数も増えましたし、忙しい今の方がすごく充実しています。

父) 寮生活の中では、周囲からさまざまな役割や仕事を任されることが多いようですが、その一つひとつに真面目に向き合い、責任感を持って取り組んでいると聞いています。人から頼られ、その期待に応えようと努力する経験を重ねることで、周囲との信頼関係を築きながら、自分自身の自信にもつながってきているように感じます。
母)自分の考えや意見、気持ちを言葉にすることができるようになってきたと思います。幼い頃は、質問されても黙り込むことが多かったので、今、自分なりに考えて話しをしている様子に成長を感じます。日頃から色々なことに疑問を持ち、考えるようになっているような印象を受けています。また、人生を「自分事」として捉えるようになったと思います。中学までは、流れのままに生活し、その時の気分で動くことが多かったような気がしますが、今は自分でどう生活していきたいか、どんな人生にしていきたいかを考え始めているように感じます。
父)寮生活に送り出す際は、親としてさまざまな不安がありました。しかし今振り返ると、健康面以外の不安については、ある意味で「あきらめる」ことが必要だったのかもしれません。不安の多くは、親が子どもの将来を先回りして想像し、大人の立場から何とか対策をしたくなる気持ちから生まれていたように思います。一緒に暮らしていれば、つい口を出したり干渉したりできますが、すでに高校生であり、親の手が届かない環境で生活しています。その中で、親があれこれ言うよりも、自分で考え、失敗や成功を経験しながら成長していくことの方が大切なのだと感じるようになりました。
ちなみに残念ながら、子供に信じて任せると言う所までは至っていません(笑)。なので先を急がず何事も経験と言う考え方だと思います。
母)朝起きられるか、毎日学校に行けるか、といった日々の生活についての心配が大きかったですが、ハウスマスターさんやコーディネーターさんに加え、調理に携わってくださる方々、先生方、地域の方々が、程良い距離感で関わってくださり、彼の自主性を大事にしながら、さりげなくサポートしてくださったので、ここまで来れているのだと思います。コーディネーターさん、ハウスマスターさんが密にやりとりしてくださるので、大きく不安になることはなく過ごせています。
この企画は北海道新聞社のWebサイト「MouLa」に掲載された地域みらい留学生のインタビュー記事を転載しています。
Webサイト「MouLa」では北海道における地域みらい留学の特設サイトを開設していますのでそちらもぜひご覧ください。
https://moula.jp/feature/c-mirai_hokkaido/
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